[back to sensorium Home page] English
[previous page]



The inside story of Net Sound


 Net Sound は、stetho というシステムで作られる表現の一形態です。stetho は、東京工業大学・大野研究室および WIDE Project が開発(*1)したもので、ネットワークを流れるプロトコルのトラフィック(TCP dump)をリアルタイムでMIDI化するシステムです。

 このユニークなシステムの本来の目的は、ネットワークの運用支援です。ネットワークの様子を音に変換することで、端末のない環境からでも電話(音声)で確認することができる。また文字データでは把握しにくいシステムの挙動を、直感的なニュアンスでつかむことができる。その名前の通り、ネットワークにあてる聴診器(stethoscope)として開発されたわけです(*2)(*3)

 sensorium のスタッフは1995年12月、WIDE Project・村井氏の紹介で同研究室を訪ね、stetho を含むさまざまな研究に強いインパクトを受けました。それらは、ネットワークに埋没するための技術ではなく、ネットワークとこれまでの日常的な生活空間を、なるべく自然にコミュニケートさせるための技術群だったからです。
(しかも全体的にユーモアが存在しました :-))。

 私たちは、「ネットワークが生きている!」ことを直感的に楽しめるようなシステムを一緒に作ってもらいたいと相談し、Net Sound の製作が始まりました。WWW上に素晴らしいコンテンツは数多くありますが、最も面白くかつ奇跡的なコトは、世界規模のこのネットワークがちゃんと生きていること、そのものではないかと思っていたからです(*4)

 こうして製作の始まった Net Sound には、音楽家の山口優氏(*5)も加わり、 96年7月にデモンストレーション版が公開されました(ここまで約半年)。今回 Ver1.0 での主な変更点は、以下の二点です。
    ・サウンドの変更
     (96年11月までの音色はサンプルをどうぞ__AIFF175K / WAV189K AU189K)
    ・RealAudio server3.0b 送出への移行
 つまるところ Net Sound とは stetho です(*6)。しかし stetho がネットワークの運用サイドを本来の対象としているのに対し、Net Sound ではインターネットのユーザーサイドを対象にしているわけです。stetho の応用による他の表現の可能性は、まだいくらでも考えられるでしょう。



NOTE
(*1:stetho を実際に開発してきたのは、大野研究室・大学院2年生の成田哲也さん)
(*2:stetho のシステムは、MIDI音源を経由して電話に接続され、外部から電話でその様子を確認することができる)
(*3:stetho は同時に 、ネットワークのユーザーが鳴らす楽器、あるいはネットワーク環境の風鈴のようなものだと言うこともできる。大野研のマシンの名称は、taiko、harp、piccolo、はてはharazutumiといった具合に、なぜか音指向が強い)
(*4:ネットワークが生きている、という感覚は、ヘビーなネットユーザーはごく日常的に経験していることだろう。大野先生は stetho 等を説明する時に「ネットワークのことが、いつも気になってしょうがない。子供と同じで、離れている時に限ってなぜか具合が悪くなるんだよね(笑)」と話してくれた。インターネットと一口に言っても、このような人達と新しいTVのようなつもりで接続を始めた人達では、感じている世界もずいぶん異なるのだなと思った)
(*5:音楽家。CM やゲームの音楽を中心に、EXPO というバンドや雑誌のコラム、東京・高円寺のマニュアル・オブ・エラーズという中古モンド系レコード店を手掛けている)
(*6:ハードウェア的な相違を記述すると、Net Sound では従来の stetho システムで使用されていたMIDI音源の代わりに、AKAIのデジタルサンプラーを使用。それをRealAudioでリアルタイム・エンコーディングし、ネットワークで提供している。stetho では電話で聴いていた)




[previous page] English
[back to sensorium Home page]